Circle LLK

UC0087

-宇宙歴0087 強化人間に捧げる挽歌-

野良騎士団によるオリジナル・ガンダム・キャンペーン第3弾は時代は一気に飛んで宇宙歴0087.03となります。

一年戦争末期より連邦軍が開発し続けていたリニアシート、火星圏から帰って来たシャア=アズナブルが持ち込んだガンダリウムγ、フランクリン=ビダンらティターンズの作り上げたムーバルフレームが組み合わさり遂に完成を見た第二世代型MS、そしてそこから生まれる可変MS群により、戦いはさらに苛烈になります。

また、基本的に連邦とジオンだけだったこれまで異なり、連邦、ティターンズ、エゥーゴ、アクシズの四巴の混戦となります。

「あなたには、刻の涙は、見えますか?」

chap.1 : ニューフェイス・ティターンズ

概要:ティターンズのセイジ宇宙に上がる。連邦のダグラスと合流。エゥーゴのガル、サティアと戦う

chap.2 : ダブル・ガンダム

概要:セイジ、うやむやの内にMk-IIにのる。バスクの攻撃でダグラスの母艦撃沈。サイコ出現。サイコの暴走で戦闘終了。セイジとダグラス、エゥーゴへ

chap.3 : エンカウント・ピープル

概要:ティターンズの追撃。ダグラス、謎の組織より百式を入手。

chap.4 : グレート・ファーザー

概要:正統派ティターンズ、セイジの父登場。一行を追い詰めるも、見逃す。

chap.5 : バトル・サーティー

概要:30バンチ事件の確認。サイコガンダム再出現。ストール登場。サイコ撃破

chap.6 : ムーン・デュエル

概要:セイジの友人リョウとの月面の決闘。ジャマイカンの介入でリョウも仲間に。戦闘後、リョウのギャプランはジャマイカンの姦計で自爆。リョウ、行方不明。

chap.7 : ジュピター・リターナー

概要:ガル、ダグラスの同期のエリート、木星帰りのストール登場。グリプスに潜入。バーザム量産工場発見。一行を追撃するバスクをストールは妨害。

chap.8 : オーデンセ・クライシス

概要:一行の母艦オーデンセが謎の組織に急襲され、オーデンセ撃沈

chap.9 : エンカウント・アゲイン

概要:新兵器補充。グリプスの工場に襲撃。サイコ出現、セイジ、フタバを救出するもストールに捕らわれる。

chap.10 : リベンジ・バスク

概要:バスク、新母艦アーティディアを急襲。セイジ、ストールの手引きで双葉を連れた脱出。バーザム入手。サティアの元恋人、クールバーサーカー、ハイアード現る。バスクと一向は痛み分け。

chap.11 : ゼダンズ・ゲート

概要:-

chap.12 : オペレーション・アポロ

概要:シロッコによるフォンブラウン制圧。一向は陽動部隊と月面で戦闘

chap.13 : ビート・オブ・ゼータ

概要:Zガンダム受領。地上のカラバに渡すように言われる。

chap.14 : セイブ・アドミラル

概要:ティターンズの暴挙からコロニーを守ろうとするヤシマ提督の救助

chap.15 : キリマンジャロ・ダイブ

概要:キリマンジャロ基地攻撃隊の支援のため、降下

chap.16 : シュート・ソーサー

概要:キリマンジャロ基地までの進撃。アッシマー隊との戦闘。カラバのアムロと合流。Zを引き渡し、ディ=ジェを入手。

chap.17 : ブロークン・マウンテン

概要:キリマンジャロ基地に侵入。G-V出現。キリマンジャロ基地、崩壊。一向、再度宇宙へ。

chap.18 : デンジャラス・バニー

概要:ルカオン率いるティターンズ強化人間実験部隊、ラビアンローズを襲撃。宇宙に上がったばかりの一行は援護に向かうが、強化人間ミカの刈るバウンドドッグの前に敗退。相手の時間切れに救われる。

chap.19 : エンプレス・フロム・マーズ

概要:ネオジオン出現。一行は偵察中に白いMSがティターンズの戦闘に遭遇。白いMSを援護する。その機体に乗った彼女は、一行を仲間に誘うが、一行はこれを拒否。

chap.20 : ダブル・クロス

概要:ストールの月面攻略隊と、ハイアードのコロニー攻撃隊の迎撃要請を受けるが、アクシズからの攻撃を受ける。ミカのバウンドドックと、謎の男のG-V改。百式整備隊とルカオン、アクシズに投降したのだ。百式整備隊の細工により、一行のMSは使用不能となる。仕えるのはストックの百式改のみ。

chap.21 : セトル・ア・ディスティニー

概要:ダグラスのフルアーマー百式改、ストールの量産型サイコガンダムと一騎打ち。戦死。

chap.22 : カーズド・ガンダム

概要:ストールのサイコガンダムとセイジ、ガル、サティア、アーティディアの戦い。三連コックピット直撃で、サイコは破壊されずにストールのみ戦死

chap.23 : クライ・フォー・ラブ

概要:ハイアード率いるティターンズのコロニー攻撃隊を止めるため出撃。プロタタイプZZを持って、ルミナラミナ出陣。サティア、ハイアードに撃たれ戦死するも彼の魂を連れて逝く。

chap.24 : マリシオス・スペース

概要:ルカオンの砲艦出現。ハイメガキャノン装備。コロニーからの充填で射撃可能。

chap.25 : マリオネット・パピヨン

概要:ミカ救出。ガル半死半生。パイロットとしては再起不能

chap.26 : ファイナル・チャージ

概要:ルカオンを止めるべく追撃戦。ルカオンの砲艦にチャージしているコロニーに、アーティディアごと突撃。リョウ救出。ルカオン戦死。


chap.1 : ニューフェイス・ティターンズ

ティターズの若手エリートであるセイジとリョウは、宇宙にいるバスクの指令を受け、連邦からの出向者だと言うルカオン、フタバ、それと荷物を護衛し宇宙に向かうように言い渡される。与えられた船は旧式のシャトル、MSはGM2だったが、二人は張り切って任務に当るが、箱入りの二人はどうも遠足気分が抜けておらず、荷物整理だなんだと、大騒ぎする(挙げ句の果てには犬まで連れている)。そんな二人を冷笑するルカオン。しかし、フタバは間抜けな二人のやり取りを見てもあまり反応もなく、虚ろな目をしている。また、二人のMSはシャトルのペイロードに入れてもらえず簡易のカーゴをつけることになった。荷物の中身をルカオンに尋ねるが聞き入れてはくれない。

そのころ、エゥーゴもこの動きを察知し、そのシャトルの目的地が兼ねてからの懸案であった、ティターズの兵器実験に使用されるコロニー、グリプスであったことからシャトルに強襲をかけることを決定する。その任務を与えられたのは古参兵のガルと新参兵のサティアであった。これはサティアの初出撃でもあり彼女の真意を確かめるものでもあり、万が一に備え、ガルには新鋭MSネモ(試作型)が、サティアにはGM2が配備される。レベッカ艦長の指令のもと、母艦『オーデンセ』(サラミス改級巡洋艦)を発艦するエゥーゴの二人。

しかし、その動きは早くもティターンズに察知され、連邦へと援軍要請が飛ぶ。それを受けたのは荒くれ者ぞろいのサラミス改級巡洋艦『アストラハン』であった。艦長はそのMS部隊の隊長ダグラスに適当に手伝うように言い、ダグラスもいやいやながら副官バーグと新人アイオスを連れて出撃する。「くそっ、なんで坊っちゃん嬢ちゃんのおもりをせにゃなんないんだよ」どうもダグラスとバーグはティターンズが好きではないらしい。困惑するアイオス。

戦闘の口火を切ったのはエゥーゴであった。シャトルを奪取するために肉薄するガルのネモ。試作ながらも戦域で唯一の第2世代MSとして圧倒的な強さを見せる。2ターン目までにサティアとの連係でセイジのGM2を半壊させ、リョウを足止めし、あわや勝利条件が確定しかけるが3ターン目のバーグ率いるガルバルディ隊の登場で戦況は一変する。サティアのラッキーヒット(機体損害表:腕(ライフル喪失))でアイオスをほぼ戦闘不能に追い込むが逆にダグラスの追加射撃を用いたサーベル+ミサイル連係により大ダメージを受け、シャトルは戦域を離脱。

戦闘はティターンズの勝利で終り、シャトルはグリプスに向かう。


chap.2 : ダブル・ガンダム

順調にグリプスへと航行するシャトル。しかし、エゥーゴの面々はまだその奪取を諦めてはいない。『オーデンセ』で体制を立て直しグリプス近辺へ侵入を試みる。一方、シャトルでは応急処置を主張するルカオンをねじ伏せ、ダグラスはグリプスへ急ぐように指示する。連邦兵士に指示されることを嫌ったセイジとリョウはダグラスに突っかかるが、ダグラスとバーグに簡単にのされてしまう。それを見て、クスりと笑うフタバ。彼女は段々と目に生気が戻っているように感じられる。ダグラスはフタバに声をかけるが、これはセイジとリョウ、さらにバーグにより断念させられる。ダグラスはセイジ達と話すうちにセイジがダグラスの一年戦争時の元上官の息子である事に気付き、こっそり、いびろうかと企むがこれもバーグ(当然、彼もその時同じ部隊にいたのだ)に見抜かれ再び断念させられる。一人泣き濡れてリリー(セイジの愛犬)と戯れるダグラス。なお、前回の戦いで機体が大破したアイオスは『アストラハン』へと戻っていた。

ガルとサティアは再びMSでグリプス近辺へと侵入するが、厳重な警備により攻めあぐねる。やはり、MSを降りなければどうにもならないようだが、パイロットである二人は生身でのアクションに自信がないのである。二人の目の前で遂にシャトルはグリプスへと到着してしまう。セイジたちは任務達成をバスクに報告するが、にべもなく新たな指令が下る。アレキサンドリアのMS部隊への転属命令である。ティターンズの旗艦に配属され、喜ぶ彼ら。しかし、ジャマイカンから敵MS接近の知らせを聞いたバスクは再び彼らに迎撃を指令し、愛機が半壊しているためあせるセイジには、なんと新型機を用意すると言い、その格納庫へ行くように指示する。感涙に咽びなくセイジ。

そのころ、いまだグリプスの庭先でうろつくサティアの通信機に不審な通信が届いていた。それはグリプスからであり、サティアたちの援護をしてくれると言う。彼女がガルに相談すると、ガルはあっさりとその提案を受け入れる。彼は基本的に人は信じるタイプらしい…罠ならば喰い破れる自信があるからだろうが(彼は非常に優秀である。能力値的には)。その声は、彼らに場所を指定し、そこで指定の時間に待っていればグリプスを混乱させるに足る新兵器を送ってくれると言う。…意を決して突入する二人。

指定の地点がシャトルと現在地の中間にあるため、躊躇なくブーストを全開にするするガルとサティア。先んじて迎撃に当るリョウのGM2はガルのネモに良いようになぶられる。仕方なく援護に出たダグラスとバーグのガルバルディも、サティアを安全に指定地点に移動させようと、敵を引き付けるために本気を出したガルのネモの装甲(ガンダリウムγである)の前に突破口を見出せない。ここで、お互いに知合いだと気付くダグラスとガル。そのため、一瞬戦線が膠着する。リョウはガルがダグラスに気を取られた隙にサティア狙うが、逆に命中を食らい、あげくコクピットに命中弾を受け気絶し、制御を失ったMSごと宇宙に放浪する羽目になる。遅ればせながら、出撃したセイジの新兵器とは、なんとガンダムMk−2。突如のガンダムの出現に驚く全員。さらにダグラス隊の母艦『アストラハン』が到着し、じわりじわりと追い詰められるエゥーゴ陣営。しかし、なんとか指定地点に指定時間にたどり着いたサティアに向かって射出されたモノは戦況を一変させるに足る兵器、『試作型メガランチャー』であった。

試作型であるため、命中補正とエネルギー充填に時間がかかる試作型メガランチャーを破壊しようと、セイジはMk−2で攻撃するが頑丈なガンダリウムγ装甲のメガランチャーはそうそうは破壊できない。あせるセイジは『アストラハン』にも砲撃を命令するが戦艦砲はそうそう当るものではない。そんななか、ダグラスはおもむろにメガランチャーにしがみつき、揺さぶりはじめた。そう、狙いを付けさせまいというわけである。バーグもそれに続き、壮絶にして世にも間抜けなMSによる棒引きが始まったのである。そして再び戦況は膠着するかと思われた…。

それは『運』でしかなかった。操縦の技量も人格の善し悪しも関係なく、ただ、その光の帯が走る先にいたかいなかったかに過ぎない。メガランチャーの発射を阻止するため、バスクはジャマイカンに命じ、コロニーの電力を利用し、アレキサンドリアの主砲を増幅して戦線に向かい一斉発射したのである。そう、味方兵士がいるにも関わらず。バーグのガルバルディ、『アストラハン』が一瞬にして光にのまれた。呆然とする、ダグラス…。撃ち抜かれたメガランチャーは大爆発を起こし、サティアも戦域外に放り出された。宇宙港は爆炎に包まれ、その中を悠然と現れるアレキサンドリア。目撃者を全て消さんとするその砲門により、ダグラスのガルバルディもシールドを失う。「バァァスク!!」 逆上したセイジは艦橋を狙うが逆に対空砲火にさらされる。ダグラスとガルは協力して脱出を計るが、もはやその機体はボロボロであった。「…ここまでか?」…誰もがそう思った時、宇宙港の端に停泊していたセイジらの乗って来たシャトルから閃光が走った。そのシャトルも被弾していたがそのなかからゆっくりと無傷の、そして巨大なMSが姿を表したのである。さらにその全身のビーム砲を乱射する巨大MSは紛れもなくガンダム!

巨大ガンダムの出現により生じた混乱を縫い、サティアを連れて逃げるダグラス。巨大ガンダムがビームを放つたび、全員の脳裏に「女性の声」が響く…「私をいじめるのはお前達か…!!」そんな中を、ガルは今だ艦橋を狙う大破寸前のセイジのガンダムMk−2を強引に引きずり、なんとか離脱。

戦闘に勝者はなく、一行はエゥーゴ所属のサラミス改級巡洋艦『オーデンセ』へと引き上げる。


chap.3 : エンカウント・ピープル

プロペラントも尽き、満身創夷のガル達はなんとかサラミス級巡洋艦『オーデンセ』に収容される。彼らを出迎えたのは艦長のレベッカであった。彼女は連邦軍人であるダグラスとティターンズのセイジにいくつかの尋問をした後、しばらくの間ですが、と断った上で彼らを船室に軟禁する。その上で『オーデンセ』を月面のフォン=ブラウンに向かわせる。フォン=ブラウンまでの数日の間に、ダグラスは部下と母艦を殺したティターンズを打倒するためにエゥーゴで自分を使ってくれと言い、それは受け入れられる。その際に、レベッカ艦長にモーションをかけるもガルの妨害により失敗。ダグラスは更にセイジにもエゥーゴに入らないかと説得を試みるが、セイジはそれを断る。しかし、エゥーゴに協力はすると言う。また、ガンダムMk−2も自由に調べてくれて構わないと言う。もう、ティターズには戻れそうもないから…。

フォン=ブラウン市に到着した一行は、レベッカ艦長達が近郊の秘密の宇宙港に『オーデンセ』を隠している間に自由時間を持つ事を許可された。ただし、セイジにはサティアが、ダグラスにはガルが監視でつく事となったのではあるが。ダグラス、ガルの同期コンビはいきなり繁華街に繰り出し飲み食いをはじめるが、世慣れていないセイジとサティアは流石にそこまで素早く行動は出来ず、アーケードをふらふらと歩く事となる。たまたま病院の前にさしかかった時、セイジの耳に聞き慣れた犬の鳴き声が聞こえて来た。

セイジとサティアに目がけて駆けよって来たのはセイジの愛犬のリリーであり、その先にいたのはセイジが共に地球から上がって来た少女、フタバであった。彼女は病院からリリーを追って出て来たところらしい。「私のワンちゃんを捕まえてくれたの?どうもありがとう」セイジはリリーと再会を喜びあった後、フタバにリリーを預っていてくれたことを感謝するが、彼女は最初にあった時のように虚ろな…そして儚げな目をしており、セイジの事は憶えていなかった。医術の心得のあるサティアは彼女が何らかの精神操作を受けている事を見抜いていた。

ザルで底無しのガル&サティアはそのころ次の店に繰り出そうとしていた。しかし、いきなり動きを止めるダグラス。いぶかしむガルに、彼はいま近くを歩いている男はコウゾウ=ヤシマ…セイジの父親にしてティターンズの高官、それもかなりの手腕を持った男だと言う事を耳打ちする。緊張する二人…しかし、ヤシマ提督は気付かずに通りすぎる。ヤシマ提督と副官の話では、裏切り者セイジを討伐するために彼が直々に指揮を取る事になったのだと言う。あわててセイジを探し、『オーデンセ』へと戻る一行。

『オーデンセ』へ戻った彼らを待っていたのは青い顔をしたレベッカ艦長であった。頼れる整備主任兼参謀のイガラシ・チーフの話では、先程、フォン=ブラウン市全域にティターンズのジャマイカン=ダンカンからの通告があり、このあたりに不穏分子(エゥーゴ)が逃げ込んでおり、あと2時間以内に彼らを突き出さないと、この市が不穏分子を庇っているとみなし、やむを得ずファン=ブラウン市の宇宙港に攻撃を行なうという。月面都市で宇宙港が破壊されたら、市民の生活に重大な支障が生じる…。しばしの討議の結果、やむを得ず出撃を決める『オーデンセ』。また、サティアはエゥーゴ本部からの補給物資に含まれていた新型可変MS「メタス」を受け取る。

出撃した彼らを襲うティターンズのMS部隊。彼らは後任のヤシマ提督に手柄を取られないように、なんとかここで『オーデンセ』を落とそうというのである。GM2とハイザックの大群が『オーデンセ』を襲い、突出したネモ(ガル)とメタス(サティア)の穴を埋めようと矢面に立ったダグラスのガルバルディβは集中砲火を浴びて破壊されてしまう。5年近く使って来た乗機の損失に悔しがるダグラス(当然、脱出は楽々と成功した)に、不審な通信が届く。機体を失った彼に、新しいMSを与えてくれると言う。条件は戦闘のたびに必ずそれを使うこと、また整備は彼らに任せることであった。復讐のため、それを受けるダグラス。岩影からあらわれたMSキャリアに乗っていたのは金色のMS−百式−であった。ダグラスが落ちた後、しばらく敵の攻撃に晒され被害を受けた『オーデンセ』ではあったが、戻って来たガル、そして百式で参戦したダグラスにより敵は全滅。

戦闘はエゥーゴの勝利で終り、『オーデンセ』は修理のためラビアンローズに向かうに向かう。


chap.4 : グレート・ファーザー

『オーデンセ』をラビアンローズで修理する中、セイジはいまだにティターンズが非道な組織であると信じられないでいた。あれは、一部の指揮官が勝手に暴発しただけではないかと…。しかし、ダグラスは「ティターンズは外道だ。もとからな」あっさりと断じる。殴りかかるセイジをあっさりかわし、ディスクを突き付ける。その記録の日付は0085.07.31。それは悪夢の30バンチ事件のものと思われる記録だった。何か、タンクのようなものをジム・クウェル…それはティターンズでのみ使用されているMSである。

30バンチ事件とは、0085.07.31にティターンズが起こした暴挙である。サイド1の30バンチコロニーにおいて行なわれた反政府デモに対し、時のティターンズ指令官バスク=オムは、こともあろうにG3ガス(極めて毒性の高いガス)を用いコロニーを一つまるごと死滅させた事件である。これはいくら強引とは言え、理に適った行動の多いティターンズにしてはあまりに不自然で裏に何らかの策謀があったと言われている。当然ながら、このことは0087.05時点では公式にはされておらず、徹底的に隠蔽されており、一部の者のみが不完全な情報を基にそのことを知っていたに過ぎない。公式発表では30バンチ全滅は、悪質なウィルスによる伝染病とされていたのだ。そして、当時サイド1周辺を警備に当っていたダグラスとバーグは偶然にも30バンチ事件の一部始終を目撃してしまう。その時はバーグの的確な記録媒体の操作により「目撃したと言う事実」を消し去り事無きを得ていた。しかし、その事件が気になった二人はその時の記録をマイクロフィルムに隠し持っていたのだ(ゲーム的に言えば「関係していたかチェック」で6ゾロを振ったのである)。

あまりのことに青ざめるセイジとサティアとレベッカ艦長。まだ信じられないと言った風のセイジを見たイガラシ・チーフは一行に現地に言ってみてはどうかと言う。彼は普段、MSの整備を行なっている筈だが、現在は百式と一緒に入って来た整備隊(以下:百式整備隊)が勝手に整備をしているので、どうにも居心地が悪くブリッジにあがっていたらしい。勝手にMSがいじられていると聞いたダグラスは百式のもとに駆けつけるが、「これは契約だった」とにべもない。ごねたダグラスは、レベッカ艦長が「エゥーゴ上層部から彼らの身元は保証されているから大丈夫でしょう」と説得するまで百式整備隊と睨みあっていた。その後、レベッカ艦長を喫茶店に誘う事に成功する

『オーデンセ』はサイド1に向かい進んでいた。そして、宇宙空間に浮かぶ残骸を避けるように進んでいる最中であった。百式整備隊の影響でで険悪なムードの漂う中、レーダー手が敵反応をキャッチする。ミノフスキー粒子であまり役に立たないレーダーにかすかに映る独特の艦影…それはまごう事なくティターンズの誇る主力艦、アレクサンドリア級巡洋艦であった。懐かしいような…そして、なにか辛いプレッシャーを感じるセイジ。それを見たダグラスは遂にヤシマ提督が出て来た事を察知する。

ヤシマ提督の指揮するアレキサンドリア級巡洋艦『ミクトラン』からのレーザー通信が『オーデンセ』に届く。内容は降伏勧告であった。当然ながらそれに応じない一行はMSで迎撃の準備にあたる。セイジは一人、「父さんとは、戦いたくない」と出撃を嫌がるがガルに殴られる。「お前はMSのパイロットだ!この艦に居る以上、ここを守る義務がある!お前が逃げる事で何十人ものこの艦のクルーが死ぬんだぞ!」あわててMSに乗るセイジ。戦いは前回、ムーバルフレームの無い相手からは理論上攻撃をもらう事の無かった百式にのるダグラスが前線にでるが、相手の攻撃が容赦なく襲いかかり、百式のビームライフルも3距離からでは相手にダメージを与える事ができない。相手は今までのハイザックだけでなく、アナハイムが疑惑回避のためにティターンズに無償で供与した第二世代型MSマラサイであったのだ。標準的であるが、それゆえに隙の無いマラサイに、さらに熟練パイロットが乗っているため追い詰められる一行。巧みに二部隊に分かれ、周囲を包囲したところで、さらに『ミクトラン』から出撃するマラサイ部隊…完全に追い詰めたところで再び降伏勧告をするヤシマ提督。しかし、一行はそれを承知しない。「息子よ…せめて私の手で」攻撃命令を仕掛けようとするヤシマ提督−『ミクトラン』の艦橋−の目の前に飛び出すダグラス。ヤシマ艦長もその機体のパイロットが元自分の部下だと気付く。

「ダグラス君かね?、残念だよ。君の能力ならティターンズの隊長にもなれたものを。バーグ君は元気かね?」

「死んだよ。ティターンズにやられてな…。『アストラハン』のみんなもだ」

「そうか…」

「変わったな…昔のあんたは厳しかったが不正に手を貸すような軍人じゃなかった!」

「変わったのは時代だ。体制の維持には時には強権も必要だと言う事だ。そんなとき、軍人は非常でなければならない」その言葉に、セイジおもわず飛び出した。

「父さん!地球も宇宙も、みんなが安全に暮らせるようにするのがティターンズの目的ではなかったのですか!!」

「そうだ。『一人でも多くの人』が安全に暮らせるようにするのがティターンズの目的だ」

「だから…だから、少数の人は見捨てるというのですか!」

「今の私には、全員を救える力は無いと言う事だ。お前も戻ってこい、セイジ。」

僕は、嫌だ!諦めたくはない!力が足りないと決めつけたくないんだ!だから、僕は戦う、例え父さんとでも、だ!!

しばしの間、戦場が膠着する。

「しばらく見ないうちに戦士の顔になったな、セイジ…よかろう。ここは見逃してやる。しかし、お前が本当に『一人でも多くの人』の安全に反する時、私はもういちどお前の前に立つだろう」

ヤシマ提督はそう言い、部隊を引き上げさせる。そして、MS部隊のエースでもある副官に謝罪する。−「すまないな、私のわがままで」−「いえ、艦長こそよろしかったのですか。いまのティターンズにいるのは…」−「いや、いいんだよ。そう、歴史は若者が作る喪のだからね」……。

戦闘は勝者を決める事無く終り、『オーデンセ』はサイド1…30バンチに向かう。


chap.5 : バトル・サーティー

サイド1、30バンチ。そこは既に無人となったコロニーである。既に閉鎖された宇宙港は使用できず、『オーデンセ』周囲に浮かぶ残骸の中に身を隠す。安全のため、MSを用い、廃棄コロニーのところどころに出来た亀裂から中に入る一行。なお、調査のためにイガラシ・チーフも同行する事にする。しかし、ティターンズの暴挙のバーグラスの残した記録にあるような毒ガス注入タンクはすでに撤去されており、中も何者かに徹底的に調べられ、証拠になるようなものは何もなかった。TV局を調べていたサティアは何も見つけられない。地下のメンテナンス用のハッチを調べていたダグラスは奥まった部分で苦悶の表情を残した変死体を見つけるが、それも決定的な証拠にはなりそうもなかった。そして、ショックのあまり一人公園で探索をサボっていたセイジは立ち枯れた植え込みの中にハンディカメラが落ちている事に気がついた…きっと当時は植え込みが生い茂り、このカメラに気付かなかったのだろう…セイジはそんな事を考えながら、それを再生してみる。

昼下がりの公園、休日だろうか?何組みかの親子がそこで遊んでいる。カメラのファインダーはその中の一人の子どもを追いかけている。子供もカメラの方に盛んに声をかけ、跳ね回っている。年の頃は四、五歳だろうか?可愛らしい女の子がおそらくこのカメラを回していたであろう自分の父に一緒に遊ぼうとねだっているのだ。かつての自分と重ね、微笑むセイジ。と、少女が突然倒れた。そして、カメラは目まぐるしく周囲を映し出す…撮影者がカメラを放り投げたのであろう。がさっ、という叢に落ちた音がした後、娘の名を叫ぶ父親の声も突如苦悶のものに変わる。その間、黙々と空を映し続けるカメラ。画面には黄色い靄がかかる…なんらかのガスのようだ。

CENTER>…そして、カメラの映像は止まった

吐きそうになるが、ノーマルスーツ着用中のため、必死に堪えるセイジ。と、MSで周辺を警戒していたガルからエマージェンシーコールが届いた。連邦の警備隊が近付いて来たのだ。他のまだパイロットの乗っていないMSを守るため、一人立ち向かうガルのネモ。一方の連邦軍だが、こちらはどうもティターンズの命令で警備していたらしくあまりやる気がない。「やりすごせるか?」手を出さず、成行きを見守るガルのモニターに新たな敵の反応が示される。新たな敵、しかもティターズの増援で一気に劣勢になるガル。しかも、連邦軍も本気で攻撃を開始したのである。一気にガルを追い詰めるティターンズ。しかし、ここでセイジ、ダグラス、サティアのMSが始動。再び流れはエゥーゴに傾き、そのまま一気に押し切る。連邦のガルバルディβは無視し、ティターンズの部隊を落とす。そして、連邦軍には降伏勧告し、これを下した。戦闘が終わった、そう思った時、それは現れた。

コロニーの影から現れたそれは圧倒的な質量をもち、そしてガンダムのシルエットを持っていた。それを遥か遠くから眺めるルカオン。「ふっ、『あれ』もそろそろ使いものにならなくなって来た。ここでヤツラを倒せればよし、倒せなくとも自爆させればそれでよし」ルカオンの乗るシャトルはその海域を離れて行った。しかし、そんなことは知らない一行は必死にプロトタイプサイコガンダムの攻撃をしのぐ。

「お前達が、お前達が私の記憶を奪って行く! お前達など消えてしまえ!!」

頭に響く女の声にヒクつくダグラス…「こんな時にはろくな事がないんだよな…」

そのパイロットの声に聞き憶えを感じるセイジ。

こちらからのビームは弾き返され、相手の攻撃は防ぎ切れず、手も足もでないガルとサティア。ガルはネモの片手と頭部(モニター)をうしない事実上戦力外となる。サティアもメタスのビームガンではそもそも援護になっておらず、結局はダグラスのクレイバズーカとセイジのハイパーバズーカに勝負がかかるがそれらも弾切れになる。さらにコクピットに直撃弾を受け、全滅を覚悟するダグラス。その時、突如飛来するMA。それは今まで見た事がないタイプのものだった。強力なメガ粒子を放ち、プロトタイプサイコガンダムの攻撃を引き受けながら叫ぶ。

「ビームサーベルならやつの倒せるチャンスもある!私が引き付けている間にやつに攻撃しろ!」

その声に聞き憶えるあるダグラスとガル。しかし、それが誰かは二人とも思い出せなかった。非常に嫌な予感はしたのだが。一方、一人気を吐くセイジは、すかさず突撃し、相手のコクピットを切り裂く!そして、そのショックでプロトタイプサイコガンダムの気絶してしまう。その瞬間、セイジの脳裏にフタバが浮かび、パイロットの悲鳴と彼女の悲鳴がだぶる。

「まさか、君は!」

その機体を拿捕しようとする一行。しかし、機体は突如爆発を開始する。ブーストでその場から離脱する一行に対し、謎のMAはその中に突入し、MSに変形しコクピットカプセルを回収、飛び去ってしまう。あれは、一体何だったんだ…?、とつぶやくガルに、今は分からん、だが、近いうちにきっと分かる、というダグラス。そして、セイジはいつか再びフタバに会う事を予感していた。

戦闘はエゥーゴの完全勝利で終り、『オーデンセ』は再び月に向かう。


chap.6 : ムーン・デュエル

悪夢のような戦闘を終え、母艦『オーデンセ』で休息する一行…と思いきや、重傷で医務室に閉じ込められているダグラスの周囲でドンチャン騒ぎをしていた。ダグラスは本来なら絶対安静なのだが、調子にのって足のギブスに落書していたセイジに蹴りをくれる。さらに止めの一撃を加えようと腕をふりあげたところに入って来るレベッカ艦長。しかし、

「心配して来ましたが、大丈夫のようですね。では、私はこれで…」

と、あっさり帰ってしまう。流石にほかの連中も可哀想になり、御大事に、と言い残し解散してしまう。ダグラスは病室で一人枕を濡らすのであった。

精神的打撃のせいか、ダグラスは月につくまでには完治せず、フォン=ブラウン市の病院に収容される。他のメンバーも見舞と称して街に繰り出す。とりあえず病院までは、と全員病院に向かうが、そこで、セイジとサティアは再びフタバに出会う。リリーを膝に抱える彼女は車椅子に乗っておりかなりの重傷のようだ。

「君は…、まさか…」

「あら…どちらさまでしょう?」

さらりとかわされ愕然とするセイジ。サティアは一人イジける彼を慰めながらフタバと会話することで、フタバが強化人間…強力なMSに乗るために人工的に必要な力を増強された人間…ではないかと疑いはじめる。まだ確立されていない技術で『強化』された者は記憶や人格に障害が生じると言う…

フタバは再び記憶を失っていたのだ。

その後、フタバは彼女を探していた看護婦に連れ戻される。どうやら、彼女は病室を勝手に抜け出していたところらしい。彼女は何者かとサティアは看護婦に尋ねるが、答えてもらえない。結局、待ちに出る気にもならず『オーデンセ』に戻るセイジ。しかし、『オーデンセ』に戻った彼のもとに驚くべき知らせが入っていた。イガラシ・チーフの話では「ティターンズのリョウ」と名乗る男から連絡があったらしい…決闘を申し込む、MSにのって一人で来い、と。

整備員達の制止の声も聞かずガンダムMk−2を出撃させるセイジ。イガラシ・チーフの知らせを受けたレベッカ艦長はあわてて他のパイロット達を街から呼び戻す。しかし、加速性能に優れたガンダムMk−2はあっと言う間に指定地点に到着してしまう。そこで待ち受けていたのは一機のギャプラン。

「セイちゃん!、なぜティターンズを裏切ったんだ!!」

「リョウちゃん!、僕の話を聞いてくれ!!」

「…なんだい」

「いまのティターンズのやり方は間違っているんだ!」

「なぜそういえるんだ?」

「僕は見て来たんだ。エゥーゴごと僕を殺そうとしたのを!、毒ガス攻撃で誰もいなくなったサイド1の30バンチを!、そして、他人を改造してまでいることを!!」

「…なんだって…そんなことが…」

動揺するリョウ。彼は『オーデンセ』の面々と会うまでのセイジと同じで、ティターンズの正義を疑っていなかったのだ。

「…何の証拠があって…」

爆音が響いた。ミノフスキー粒子濃度が濃いため、狙いは適当だがとにかく数が多い。とくに、ガンダリウムγ製でないセイジのガンダムMk−2は大きなダメージを追ってしまう。しかし、一番驚愕したのはリョウであった。

「そ、そんな! セイジは私に任せてくれる、説得のチャンスをくれるといったではないですか、ジャマイカン提督!」

そんなリョウの叫びを無視し、クレーターからゆっくりと姿を表すアレキサンドリア…そして、そのなかで指揮をとるのはジャマイカン=ダンカン。

「ここでそいつをうち漏らすわけにはいかんのだよ」

アレキサンドリアを中心に新兵器のマラサイ部隊を中心に1個中隊クラスのMSを展開させるティターンズ。

「見たか、リョウちゃん! これがあいつらのやり方だ!」

「…あぁ」

「来いよ、リョウちゃん! また一緒に戦うんだ!」

「おぉよ!!」

しかし、多勢に無勢でで追い詰められるガンダムMk−2とギャプラン。この2体はともに第1.5世代機とでも言うべき機体であるため、完全な第2世代型MSであるマラサイに対しては不利は否めないのだ。しかし、推力全開のメタスにつかまって現れたリックディアスと百式の参入で戦線は一気にアレキサンドリア側に押し戻される。…ガルは地上攻撃用に使うためエゥーゴ本隊に回収されたネモの代わりにリックディアスを配給されていたのである。リックディアスの重装甲が決定力に欠けるマラサイを押し返し、百式の機動力は第1世代機からは理論上、有効弾をもらわないのだ。青くなったジャマイカンは傷だらけのアレキサンドリアを引きずり、ほうほうの呈で逃げ伸びる。ゆうゆうと戦域から離脱する一行。敵の援軍が来るまでに充分な時間があるだろうから。しかし、彼の瞳が暗い炎を湛えていた事に気付いた者はいなかった。

『オーデンセ』に引き上げる途中、

リョウのギャプランは謎の爆発で大破した。

後に『オーデンセ』のクルーが残骸を回収した際には

コクピットは消失し、リョウの姿は無かった。

戦闘はからくもエゥーゴの勝利で終り、『オーデンセ』は再びグリプスに向かう…ギャプランの破片を握り、部屋に閉じ籠ったセイジを載せて。


chap.7 : ジュピター・リターナー

『オーデンセ』のなかで、一行は不満の声をあげた。この艦がグリプスに向かっていると言う事をはじめて聞いたから、そして自分達が生身でそこを偵察しろと言われたからである。レベッカ艦長も、これが自分達には不向きな仕事だと言う事は承知していたが、なにしろ、エゥーゴの本隊はジャブロー攻略のために地上に降りてしまっているので自分達くらいしか主な戦闘部隊は残っていないのである。レベッカ艦長の説得で瞬間的に不満の無くなったダグラスと、もとからやる気まんまんのガルに引きずられるようにしてグリプスに潜入する一行。例のごとくMSを隠し、生身でコロニー内に侵入する。

潜入は順調に進む。順調すぎるとも言える程に。宇宙港、居住区をまわり内部に侵入し、MS工廠を発見する。そこで、ガンダムMk−2に良く似た機体を発見し、そのデータを収集する。記されていたコードは量産型ガンダムMk−2"Bz-M"…生産ラインに並ぶそれらに戦慄する一行。バランスの取れ、第2世代型MSの特徴を備えたガンダムMk−2、おそらくは恐るべき敵になるであろう事が推測できるからである。そして、データの状況ではあと一週間足らずでこの量産機はロールアウトしてしまうであろう…。懸命にデータを収集している彼らはある人物に観察されている事にまったく気付かなかった。

いざ、脱出と言う時に一行はたった一人の人物に捕縛される。その手際は鮮やかで誰一人まともな反撃をする事は出来なかった。サティアは一撃で気絶させられ、彼女を人質にされた。そして、隙を見て飛びかかったダグラスは足をうち抜かれ、サティアを奪い返そうとしたセイジはキック一発でふっ飛ばされ、ガルはメンバーの命の保証と引き替えに降伏したのである。無言のまま、彼らをある部屋に連れて行くその男。

「ご苦労だったな、ディレイ」

その声は全員が聞き覚えがあった。以前プロトタイプサイコガンダムとの戦いに現れた、謎の可変MAのパイロットの声であり、そしてガルとダグラスはここにいる男がかつての士官学校での同期生、しかも主席であった男、ストール=ハイペルであると気付いたのである。ヒクついた顔のダグラス。どうやら昔から剃りが合わなかったようだ。一方、ガルは彼に静かに自分達をどうするつもりかと尋ねた。そんな彼らを値踏みするかのように見回すストール。そして、にっこりと微笑み…目は笑っていなかったが…彼らを解放すると伝えた。いかぶしむ一行。しかし、ストールに「それではバスク大佐に突き出してあげようか?」と脅され、あわてて逃げ出したのであった。

なんとと言うべきか、当然と言うべきか、一行がMSにたどり着いた頃、グリプスの警備隊が彼らに迫っていた。その先頭をすすむマゼランを見ていきり立つダグラスとセイジ。そう、バスク=オムが現れたのだ。しかし、そこを遮るように現れるストール率いるグリプス警備隊

「大佐、ここは本部付きの大佐殿が出る程の事ではありません…」

慇懃な態度の彼に対し、バスクはあくまで強気に出る。彼の号令一下、一斉に襲いかかる本部部隊。しかし、ストール率いる部隊は何故か本部部隊を妨害するかのごとく展開する。どなるバスクにストールは訓練不足と新型機ゆえの不慣れを理由にのらりくらりとそれをかわす。それに却って怒りを募らせたのはダグラスであった。馬鹿にするなと叫び、切りかかるがあっさりとしのがれる。そして、やる気があるのかないのか解らないような行動を繰り返す。また、セイジはバスクの艦へ無謀な突撃を繰り返す。ガルはダグラスとセイジを諌め、戦線から離脱した…納得できない思いを感じながら。そして、満足そうにそれを見送るストールと激怒するバスク。

戦闘は、ストールに見逃されたエゥーゴがからくも逃げのび、一行は『オーデンセ』に向かう。


chap.8 : オーデンセ・クライシス

納得の行かない撤退をした一行は、母艦『オーデンセ』に到着した。一通り整備と補給を済ませ、一息着いたところで突然警報が鳴り響く。慌ててMSの乗り込むが、その最中、ダグラスは百式整備隊がいなくなっている事に気付く。彼の脳裏に、彼らは「より激しい戦いをもとめて、この艦に百式を与えた」のだ、そして、地上降下作戦に使われなかった事を不服として、ここを狙わせたのではないか?、そんな考えがよ切る。

「どうして…、俺のいる艦はこうなっちまうんだろうな」

止めどもない考えを振り切り、百式に乗り込むダグラス。

一行の目の前に、ガルの駆るリックディアスに良く似たMSが凄まじい勢いで突進して来る。アナハイムエレクトロニクス系列だということは見て取れるが細部は異っている。セイジは自分達は完全に敵を振り切ったと言いきり、イガラシ・チーフも『オーデンセ』もずっと隠れており敵には発見されていなかったはずだと言い張る。…敵は身の内に居る…つぶやくダグラス。そうした間にも敵は距離を詰めて来る。『オーデンセ』めがけて一直線に。

執拗に『オーデンセ』を狙う敵MSに苦戦する一行。バインダーと一体型のビームキャノンが意外と手ごわいのだ。とくにガンダリウム系列装甲ではないセイジのガンダムMk−2は4距離から攻撃を受ける始末で悶絶する。サティアのメタスとダグラスの百式はうまく敵の頭を抑えるが、ガルのリックディアスはいかんせん推力が足りず、抑え切れない。そこに、陽動部隊の隊長の号令一下、本命部隊が戦線の横っ腹を襲う。直観的にレベッカ艦長達に脱出の準備をするように言うダグラス。あと2ターンで『オーデンセ』は離脱できる。しかし、その次のターン、『オーデンセ』への攻撃の機体損害表は誘爆(×5)だった。爆沈する『オーデンセ』。レベッカ艦長とイガラシ・チーフ達は脱出チェックには成功し、ランチで戦線を離脱した。敵に追撃の意志はなく、一行はなんとか逃げ延びる。

その様子を遥か遠くで見守る一団。その中の一人が、ある集団に何故自分達の味方になったのかを問う。相手の答えはにべもない。

「私達はより多くの戦闘データが欲しいのですよ…ですから私達は貴方がたに味方します」

握手をかわす一団。しかし、そのさらに遥か遠くでは、それの知らせを受けた女性がつぶやいていた。「俗物共めが…」、と。

戦闘は『オーデンセ』の撃破によりティターンズの勝利で終わり、一行は脱出ランチにつかまり、からくもラビアンローズへ到着する。


chap.9 : エンカウント・アゲイン

度重なる敗戦で、意気消沈する一行。そんな彼らにエゥーゴはテコ入れとして新型機の大量投入を行なう。しかしそれは取りも直さず、宇宙戦力として彼らが当てにされているからに過ぎない。失われた『オーデンセ』の代わりとして、ラビアンローズで竣工したばかりのアーガマ級強襲用巡洋艦二番艦『アーティディア』が与えられる。さらに、百式整備隊の残留品から組み立てられた百式改、さらにガンダムMk−2の強化発展機、ガンダムMk−3を用意すると言う。しかし、その準備を待っていては量産型ガンダムMk−2がロールアウトしてしまう…そう判断したガルは指令部の命令を無視し、先行出撃し、補充はあとからくる『アーティディア』にのせて追い付いてもらう事を提案する。反対する者は、いなかった。ラビアンローズのスタッフの手を借り、ロケットブースターで無理矢理加速する。肉体の苦痛をこらえる一行。

ブースターを切り離し、簡易MSデッキを暗礁地帯に隠す。イガラシ・チーフはそこに残り、新兵器メガランチャーの準備をする。また、用意が出来た予備機体ネモの射出準備も行なう。一方、ブースターの加速を利用したまま一気に防衛線を突破するMS隊。並いる浮遊砲台を次々に撃破し、第一次防衛線は瞬く間に突破する。返す刀で第二次防衛線も敵MSを全滅させて突破する。しかし、アクシデントでメタスのモニターが破壊されてしまう。ここで、一度弾倉やエネルギーCAPを用い残弾を回復させてから次に挑む。

眼前に広がるグリプス。気を引き締めて以前調査した工廠を目指す。しかし、やはり安々とはいかずストールのメッサーラに発見され、戦闘となる。さらに彼が呼び寄せたグリプス警備隊のマラサイが一行の行く手を遮る。正念場と見た一行はネモを括りつけてメガランチャーをいきなり射出してもらう。ネモをサティアの次の乗機にするためである。百式が信号弾を投げる。2ターン目に到着したメガランチャーとネモ。サティアはこのターンに乗り換えを行ない、ダグラスは百式とメガランチャーを接続、照準にはいる。それをフォローするガル。突出するセイジ。さらに3ターン目、密集するマラサイ部隊にメガランチャーを撃ち込み、これを3体まとめて殲滅する。セイジはバーザム一体のビームキャノンを破壊し、一気に奥に進む。勢いに乗る一行。

しかし、相変わらずストールの動きは不可思議。セイジを止められる位置にいるにも関わらず、メガ粒子砲で牽制するに留まる。サティアは最後の一体のマラサイと混戦になり、他にちょっかいを出せない。ガルとダグラス距離を詰めるだけ。5ターン目にしてセイジは耐久力の半分を残してグリプスに侵入する。何故か満足げなストール。ガルはなんとかセイジを追おうとするがリックディアスの推力ではそれは無理、結局バーザム2体を足止めされ、それを強行突破するはめになる。ダグラスの百式はというと、のらりくらりと逃げようとするストールに一気に白兵戦を挑み、逃さないように移動妨害し続ける。巧みに攻撃をかわすストールとそれを足止めし続けるダグラス。どうも、ダグラスのストールに対する恨みは深く、女を取った取らないの話にまで落ちていく。サティア曰く、「ダグラスさん、それ逆恨みです」

一方、グリプスに一人侵入したセイジを待っていたのは巨大な、そして黒いガンダム…サイコガンダムであった。フタバが乗っているのではないかと思い、攻撃とためらうセイジ。しかし、

「お前か、お前が私の記憶を奪っていくのか! お前などひねり潰してやる!」

彼女はまるで取り合わない。セイジの問いかけに対する答えはメガ粒子を持って返される。ここは先に工廠を潰そうと焦ったセイジは奥に踏み込もうとするが、焦りによるミスかサイコガンダムの火力を最も集中できる位置、正面、距離2に納められてします。腕部と胴部のメガ粒子砲が交錯し、最大火力の拡散メガ粒子砲とメガ粒子砲3門の集中砲火を浴びる。そして、運悪く全弾命中…理論上1%以下の悪夢が起き、一つはシールドで防ぐがシールドが破壊され、一つは回避したが、残り二発の命中弾はガンダムMk−2を破壊するのに充分な力を持っていた。爆発に包まれる白いガンダム。セイジはこれ以上ない程見事に脱出した。そして、そのままサイコガンダムの頭部…フタバの声が聞こえた場所に泳いでいく。

「誰も、誰も君の記憶は奪いやしない! 記憶を消しているのはこの邪悪なガンダムで戦う君自身だ!」

NT候補生(自称)の面目躍如。彼の心は彼女の心を開く。しかし、そのかわりに制御を失うサイコガンダム。滅茶苦茶にメガ粒子砲を辺りに巻散らし、自分をも焼いて行く。もちろん、そばにあるバーザムの工廠もただでは済まなかった。コロニーの外から見ても分る大爆発が起きた。任務に成功したのか、それともセイジが散ったのか心配する一行。しかし、ストールはなにやら満足そうな様子だった。その虚を付かれたか、ストールを逃してしまうダグラス。

バーザムをなんとか振り切り、グリプスにたどり着いたガルが見たものは、焼き尽くされた工廠と、そこで崩れているサイコガンダムと、もと白かったであろう物の残骸のみであった。セイジの姿を求め周囲を見回すが彼は何処にもいない。

「なんてこったい! セイジは、セイジは自爆してここを破壊したのか!」

もしもガルもNTとして洞察力を鍛えておけば「それは違う」という抗議の声が聞こえたかも知れないが、歴史にIfはない。戦線に引き返すガル。それを見たストールは「これ以上の戦闘は無意味だな、事後処理もあることだしな」と意味ありげに笑い、部下である2体のバーザムを引きつれ撤退する。

戦闘はサイコガンダムの暴走により生産ラインが破壊された事でエゥーゴの勝利で終わり、セイジを除いた一行は彼の仇討ちを誓いながらグリプスを後にする。


chap.10 : リベンジ・バスク

グリプスから引き上げた一行は予定の地点で新母艦アーガマ級強襲用巡洋艦『アーティディア』と合流する。ガルによるその知らせではセイジは生死不明だと言う。さっさと帰ろうというダグラスもレベッカ艦長が、生死を確かめてみましょう、というとあっさり意見を翻す。修理に時間がかかりそうなネモと百式の代わりにメタスと百式改を使用し、修理の労力はリックディアスに集中させる。そのころブリッジでは敵影を捉えていた。「グリプスからの追っ手だな…あいつらをひっ捉えてセイジの生死を聞き出すぞ!」無茶なことを言い、出撃するガル。

時間はしばらく遡る。セイジは、自分を呼ぶ声で目を覚ました。

「やぁ、セイジ君。お目覚めかな?」

その声は紛れもなくストール=ハイペルのもの。飛びかかろうとするが後ろに控えていたディレイに抑えつけられる。

「ふふふ、嫌われたものだな。君が助かるように私が手を回し、彼が爆炎のなかから君を連れ出したのだ。感謝の一つも欲しいところだよ」

ストールの口調はあくまで流麗で淀むところはない。気圧されるセイジ。

「企みがあって、僕を助けたんでしょう? 汚いですよ」

「汚いのは確かだ。しかし、汚くても生きていることは、そうでないよりも数倍よいことだよ」

ストールらしくない、自分に言い聞かせるような言葉。しかし、そのニュアンスに気付くにはセイジは少々経験が足りなかった。

「で、なにを僕にさせるつもりなんだ?」

すこし、考えるストール。そして再びいつもの笑み…仮面に張り付いたような笑みを浮かべる。

「まずは、フタバ=ムラサメくんを君にここから連れ出してもらいたい。彼女の上官であり『管理者』であるルカオン殿がアクシズに走ったため、彼女の立場は極めて悪い。はっきり言えば『処分』待ちだ」

「なっ!」

「君も彼女を全く知らないわけでもないだろう。引き取ってもらえると、こちらとしても助かる。ここから脱出するためのMSもこちらで用意しよう」

滑べるように止まらない彼の弁舌に不審をあらわにするセイジ。

「あんたはここの警備をやっているんだろう? 僕や彼女になぜそこまでする?」

噛み付かんばかりのセイジにやれやれと言った風なストール。

「私は先日の君達の侵入の責任を取って警備隊長を辞職している。後任はいらっしゃておられたバスク大佐が就いておられる。彼は失態がなければ新造戦艦ドゴス=ギアの艦長に就くはずだったでしょう。しかし…」

楽しそうに言葉を切るストールに、察しの悪いセイジにも彼が何を言わんとしているのかは想像できた。彼はバスクをはめたのだ。フタバを逃すのもその一環だろう。

「…分った。あんたは気に入らないけど、バスクはもっと気に入らない。あんたに協力するよ」

こうして、交渉は成立した。セイジはバーザムと眠っているフタバを渡され、グリプスを密かに脱出した。それを見て、満足げなストール。あの男達は危険だ。互いに噛ませ合い、あの方の妨げにならないようにしなければならない。

時間軸は戻る。まんまと自分の警備していた場所を破壊され、復讐に燃えるバスク。彼はドゴス=ギアの使用を許されないため、特殊なマゼラン改級戦艦『バーキストン』を引っ張りだして来ている。しかし、虎の子の特殊部隊を呼んでおいた。これ以上の失態は許されない、それがわかっているからの、必勝の体勢である。2ターン目、仲間の仇であるバスクに目がけて突進したダグラスの百式改がすれ違いざまにハイザックを吹き飛ばす。しかし、ハイザック隊は散解し一度に複数の敵がバスク艦に接敵しないように基本を守る。第一世代型とはいえ、統制の取れた動きにてこずる一行。3ターン目に更に敵の増援がある。しかも、なんとギャプラン隊である。戦線は一気に『アーティディア』に向かって圧される。しかし、ダグラスは止まらない。全力で移動し『バーキストン』に取り付くなり、いきなりビームサーベルを艦橋にたたき込む。しかし、バスクには届かない。そして、無理な突出に耐え得る程、百式改は完成された機体ではなかったし、ダグラスも落ち着いてはいなかった。集中砲火を浴び、半壊する百式改。ダグラスはさっさと脱出し、生身で『バーキストン』に乗り込む。5ターン目にバーザムに乗ったセイジ登場。しかし、敵っぽい機体だの幽霊だの言われ、気力が抜けたか登場ターンには活躍なし。もっとも、次のターンにはいきなりエンジンを撃ち抜いたか『バーキストン』に大ダメージを与える。さすがに脱出の準備をするバスク。だが、そこに銃を構えて現れるダグラス。逃げようとするバスクに足を掛け、転倒させる。

「長かったぜ…だが、ここで、仲間の仇を討たせてもらう」

張り詰める空気。しかし、追い詰められたのはバスクだけではなかった。一機のギャプランが『アーティディア』の艦橋にメガ粒子砲を突き立てて警告する。撃てば、…撃つと。ダグラスはレベッカ達を見捨てることは出来なかった。歯を食い縛り、バスクを見逃すダグラス。警告を発したギャプランのパイロット…ハイアードがバスクを回収する。彼の挙動に愕然とするサティア。彼は彼女の恋人であったのだ。かつて、捨て石同然にの任務に就かされ、そして帰って来なかったはずのエースパイロット。それがハイアード=ロレックだった。速度に優れるMA形態メタスでハイアードの前にでるサティア。なぜ、そうまでしてティターンズに尽くすのか、と。しかし、彼の言葉は冷たかった。自分は既に戦いなくして生きられないのだと。そして、今もっとも世界を『安全』に導く力を持つのはティターンズである、と。そして、ギャプランは飛び去って行った。恋人の心がもはや遠くにあることを知るサティア。

戦闘は引き分けに終わり、『アーティディア』は再びラビアンローズに向かう。


chap.11 : ゼダンズ・ゲート

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chap.12 : オペレーション・アポロ

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chap.13 : ビート・オブ・ゼータ

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chap.14 : セイブ・アドミラル

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chap.15 : キリマンジャロ・ダイブ

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chap.16 : シュート・ソーサー

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chap.17 : ブロークン・マウンテン

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chap.18 : デンジャラス・バニー

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chap.19 : エンプレス・フロム・マーズ

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chap.20 : ダブル・クロス

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chap.21 : セトル・ア・ディスティニー

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chap.22 : カーズド・ガンダム

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chap.23 : クライ・フォー・ラブ

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chap.24 : マリシオス・スペース

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chap.25 : マリオネット・パピヨン

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chap.26 : ファイナル・チャージ

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