〜 野良騎士汎用判定機構 〜 [常人級]
本稿は、『超人ではないPC、NPCによる冒険・活劇』を題材とした、TRPGを実現するためのゲームシステムです。注意、ゲームの目的を良くお読みの上で、ご使用ください。また、本稿はTRPG についてある程度の知識がある方を対象としております。もし、TRPG に関する知識がない方が本稿をお手にしている場合、まず、TRPG の基礎知識を学んでから改めて読み始める事を、強くお勧めします。
この章では、このゲームを遊ぶ上での注意と、このゲームの目的について説明します。
このゲームシステムは、TRPG 同好集団 「野良騎士団」向けに作成されたものです。そのため、2004 年現在の日本のTRPG 業界における標準的なゲームシステムに比べ、キャラクターの損失率や、プレイヤーにとって意外な結末を迎える率が高めになっています。したがって、偶然と言う名の試練に挑むことを喜ぶ気持ちで遊ぶことによって、より深く楽しめることになります。
略語 | 説明 |
GM | Game Master(ゲームマスター) |
PL | Player(プレイヤー) |
PC | Player Character(プレイヤーキャラクター) |
NPC | Non Player Character(ノンプレイヤーキャラクター) |
CS | Character Sheet(キャラクターシート、ただし口語ではキャラシーとも略す) |
このゲームシステムは、「超人ではないPC、NPCによる冒険・活劇」を題材としたゲームを楽しむ事を目的としています。前段での注意の通り、このゲームシステムはどんなに強力なPC、NPCも死亡する可能性を残します。つまり戦力や能力の差は絶対的なものではありません。この「可能性」をいかに広げ、その結果を楽しむことこそ、このゲームシステムの目的なのです。また、ゲーム内では予定調和よりも、意思決定の過程と、突発的な出来事への対応を楽しむことを目的とします。また、当然ですが、全ての状況がルールで規定されているわけではありません。可能性を広げるように創意工夫を図り、プレイしてください。そして、PLがGMの判断に従いましょう。以下の原則を忘れないようにしましょう。
ゲームは、GMが用意する舞台と事件をPLの演じるPCが解決するという形式をとります。ゲームは大きくは準備段階、プレ イ段階、終了処理段階の3 つに分けることができます。ここでは、まずは、準備段階について説明します。
ゲームには、前述の通りGMとPLが必要です。GMは通常1人、PLは3〜6人程度が妥当でしょう。また、ゲームのルールのリファレンスとPL人数分のキャラクターシート、それにシナリオが必要です。ルールのリファレンスとキャラクターシートは、コピーしてお使いください。GMはシナリオを用意します。シナリオについては後述しますが、概略のみ説明しますと起承転結とそれぞれのチェックポイントを想定したメモがあればよいでしょう。PLはPCを用意します。PCの作成方法は後述しますが、ルール的な数値の上でPC作成だけでなくPCの行動方針や性格などを決めておくことで、よりゲームを楽しめます。
まとめますと、ゲームに必要なものには、以下のようなものがあります。
GMはシナリオを準備し、ゲームの進行を司ります。GMは何でもできますが、何をしても良いわけではありません。シナリオで用意した舞台の整合を取り、PCの行動の結果をルールと常識および良識にしたがって決定することが主な役割です。
PLは一般的に1人のPCを担当し、GMの用意した舞台におけるPCの行動を決定します。シナリオの状況に応じて、キャラクターを演じ、事件や物事の解決を図ります。ルールに従うことは当然ですが、全ての状況がルールで規定されているわけではありません。可能性を広げるように創意工夫を図り、プレイしてください。そして、PLがGMの判断に従いましょう。PLは何をしてもいいですが、何でもできるわけではないのです。
この章では、ゲームに必須の要素である、シナリオについて説明します。
まず、GMが決定すべき最初のもの、それは舞台です。
背景世界ではなく、PCがおかれている現状を決定することが大切です。「世界」において、PCはどんな立場にあるのでしょうか。皆に信頼されているのか、お尋ね者なのか、行動に自由はあるのか、制約あるのでしょうか。また、PCと利害対立関係にある者の立場はどうなのでしょうか。その影響力、経済力あるいは戦闘能力といったPCを妨害する力は、どんな種類で、どれほどの大きさなのでしょうか。
また、PCに味方する勢力はあるのでしょうか。あるとしたら、その大きさはどれほどでしょうか。また、味方する理由は何でしょうか。そういった、大まかな「事件」の背景を決定するのです。
そして、これらの事件の背景こそが、ゲームの舞台そのものです。
舞台として決めておくべき事柄には、以下のようなものがあります。
舞台で起きる事件の変化そのものが、物語の流れになります。
物語の作り方は専門書に譲りますが、大凡の枠組みは「起承転結」の四文字に集約されます。この枠組みに沿うことで、簡単に破綻の少ない事件の発端から解決までを物語として構築できます。
GMは下記の一連の流れを決めておくことで、PLに舞台を語ることができます。そう、GMが語るのはあくまで舞台です。物語を作るのは、PCの仕事です。まとめると、物語の流れとして決めておくべき事柄は次のようになります。
まず、事件が発生します。始まりの段階ではPCが事件を知ることはないはずです。PCを事件に誘導する方法を考える必要があります。また、事件が徐々に展開し、大事になっていく方が物語りは盛り上がりますが、PCの行動と無関係に話が進むと訳が分からなくなりがちですので、「事件が展開する条件」を定めておくといいでしょう。多くの場合、PC全員が事件に関わること、がその条件になるでしょう。
次に、事件が展開していく段階を迎えます。事件はPCの行動のみによって変化するわけではないでしょうし、PCはその全貌は分からないはずです。PCは全貌を知るため、情報を集めることなるでしょう。情報を集めることで、事件の概要が見え始める段階が「承」となります。
PCが情報を集め、事件の全貌を知ったとしても、それで事件が解決するわけではありません。PCは集めた情報に従って、事件を解決するために動かなければなりません。そのために、その解決のための手段を得る必要があります。その過程が「転」となります。
事件を解決するための手段を得たPCは事件を決着させに向うはずです。その行動過程、および、結果が決まります。これを「結」と呼びます。
この章では、ゲーム内での行為の成功や失敗を決めるルールについて説明します。
このゲームでは、物事の成否を6面体のサイコロ2つ(以下2D6)をふり、その出目により判定しますさまざまな修正が入ることが多々ありますが、この基本が変わることは決してありません。(選択ルールの中には、3D6で判定などという豪快なルールもあります)
また、本システムでは、身体能力はどんどん伸びるが、それを生かしきれない場面もある新人と、安定してさまざまな場面で強い熟練者を表せるようになっています。このゲームにおいて、すべての判定は2D6で目標値以上をふれば成功となっています。目標値は状況によって決定されます。また、2D6の出目はその判定に関係する能力値と技能による修正を受けます。このゲームでは修正は振った6面体の出目を変えることができるというものです。すなわち「1→4」という修正は2D6で振った6面体のうち、1つの1を4に変えることができるということを表します。ただし、修正により2つの6面体の出目を両方とも修正することはできません。
「1→4」の修正がある判定で2D6の出目が「3」と「1」だった場合は「1」が1→4と置き換えられ、合計は3+1=4ではなく、3+4=7で7となります。
一方、出目が「1」と「1」の場合は、片方の「1」は1→4と置き換えられますが、もう片方は「1」のままなので4+1=5で合計は5となるのです (4+4=8とならないことに注意してください!)。
判定の手順は以下の通りです。
こうした一連の手順は簡単に≪使用する技能(使用する能力値):目標値≫判定と表記されます。
技能の練度はその分野の行動においてのPCの練度を表しています。そして、その分野の行動においてはPCは最大でもその練度から導かれる修正(後述)よりよい修正を受けることができません。技能は<技能名:練度>のように表記されます。能力値の練度はある種の能力においてPCがどれくらいの力を発揮できるかを表しています。ただし、その修正は行動の分野に対応した技能から導かれる限界修正により制限されてしまいます。能力値は[能力名:練度]のように表記されます。また、技能を指定しない判定もあります。この場合、当然ながら技能により修正に制限が加わることはなく、その表記は≪−(能力名):目標値≫判定のようになります。
≪ソフトウェア(知力):7≫判定と設定された行動があるとします。ここで<ソフトウェア:3><情報通:9>[知力:25]のアルフ少尉がこの行動を試みた場合、得られる修正は「なし」です。本来、彼の知力なら「1→3」なのですが、<ソフトウェア>技能が低いため、彼はこの分野で力を発揮しきることができないのです。
一方、≪情報通(知力):7≫判定と設定された行動があった場合、アルフ少尉が得られる修正は「→3」です。彼は情報通の技能錬度が非常に高いため、知力を存分に発揮しきれるのです。このため、彼の技能ならば、さらに知力を伸ばし[知力:36]になったとしても能力修正である「1→4」をそのまま使うことができるのです!
目標値はその行動の難しさを表します。通常、目標値が5を下回るような行動(目の前に置いてある拳銃をとる、平らな道を歩く、など)は判定として行ないません。無条件で成功したことになります。また、明らかに無理な行動(一日で月まで行く、重力下において1人で巨大ロボットを持ち上げる、など)も判定しません。無条件で失敗したことになります。個別の細かい指針は技能の章で述べますが、大まかな目安を以下に示します。
目標値 | 説明 |
4 | 誰にでも簡単な行為(50cm の溝を飛び越える) |
6 | 誰でも失敗する可能性のある行為(5m の壁をロープを使ってよじ登る) |
8 | 優れた技術を持たなければ、失敗の可能性が高い行為(時速80km で突っ込んでくるトラックを回避する) |
10 | 物理的には可能だが、極めて難しい行為(ライフルで500m 先の人間を狙撃する) |